かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
戦争が視野に入っているならば、動くのは小麦だけではない。鉄や皮革製品、石材、木材などにも影響する。だが今ざっと聞き込んできた範囲では、そんなことはなさそうだった。
「……戦争じゃなく、〈冬〉を使って稼ぐ気だと?」
「冷害を引き起こせばできるだろ? 他の農産物も調べりゃ確証が――ただその流れだと得するのは商人だけだな。国家としてのバルテリスは関係ないのかもしれん」
世情に通じるイグナートなので少しは政治も論ずるが、いかんせん専門は軍事。ダニールはお抱え学者とはいえ経済までは詳しくない。だが今は、二人の知恵を寄せ集めてなんとかするしかなかった。
「……小麦の投機元の商人を探せば、ルスランとリージヤにつながるか」
「あくまで可能性だぞ」
「だがバルテリスなら。当たりだといいな」
ダニールがつぶやくのは、誘拐事件が起きたのがバルテリスに滞在中だったからだ。
ダニールの実家ジートキフ家は古物商をいとなんでいる。長男のダニールが学問の道にはまってしまったので弟のルスランが商売を継いでくれた。好きだからいいんだよ、とルスランは笑っていた。
その言葉通りルスランにはそちらの才能があったらしい。美術品の鑑定などを依頼されることも多く、何件か重なった仕事のためにバルテリスに向かったのだ。
何日も滞在するから、とリージヤとミュシカも伴った。家族旅行だが〈冬〉のミュシカを連れて行くならと護衛にダニールも同行する。そしてダニールがミュシカを預かり街を見物している間に、仕事に出かけた夫婦は消えた。
ミュシカは無事だが弟夫婦を守れなかった。あれからずっと、その思いがダニールを苛んでいる。
「情報収集しながら行こう。マルーシャちゃんは旅慣れないんだし、のんびり行こうぜ」
イグナートになるべく気楽そうに言われてダニールはうなずいた。
「……戦争じゃなく、〈冬〉を使って稼ぐ気だと?」
「冷害を引き起こせばできるだろ? 他の農産物も調べりゃ確証が――ただその流れだと得するのは商人だけだな。国家としてのバルテリスは関係ないのかもしれん」
世情に通じるイグナートなので少しは政治も論ずるが、いかんせん専門は軍事。ダニールはお抱え学者とはいえ経済までは詳しくない。だが今は、二人の知恵を寄せ集めてなんとかするしかなかった。
「……小麦の投機元の商人を探せば、ルスランとリージヤにつながるか」
「あくまで可能性だぞ」
「だがバルテリスなら。当たりだといいな」
ダニールがつぶやくのは、誘拐事件が起きたのがバルテリスに滞在中だったからだ。
ダニールの実家ジートキフ家は古物商をいとなんでいる。長男のダニールが学問の道にはまってしまったので弟のルスランが商売を継いでくれた。好きだからいいんだよ、とルスランは笑っていた。
その言葉通りルスランにはそちらの才能があったらしい。美術品の鑑定などを依頼されることも多く、何件か重なった仕事のためにバルテリスに向かったのだ。
何日も滞在するから、とリージヤとミュシカも伴った。家族旅行だが〈冬〉のミュシカを連れて行くならと護衛にダニールも同行する。そしてダニールがミュシカを預かり街を見物している間に、仕事に出かけた夫婦は消えた。
ミュシカは無事だが弟夫婦を守れなかった。あれからずっと、その思いがダニールを苛んでいる。
「情報収集しながら行こう。マルーシャちゃんは旅慣れないんだし、のんびり行こうぜ」
イグナートになるべく気楽そうに言われてダニールはうなずいた。