かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
揺れる二人の心はどこへ
これって恋ですか
風邪をひいたせいでパルバの町に二泊することになったが、一日ゆっくり眠ってマルーシャの熱は落ち着いた。なんだか頭もスッキリしている。
旅を再開した馬車で、マルーシャは外套を着ることを条件に馭者台に出してもらっていた。膝掛けもちゃんとして暖かくする。でないと全員が渋い顔になるから。
倒れたのは自分なので言う通りにした。でも外の空気や息づく自然、そんなものに触れていた方が元気になれる気がするのだった。
「お母さま、さとうづけたべた?」
車内との間にある小窓越しにミュシカが訊いた。
「まだよ。ミュシカが選んでくれたんだもん、もったいなくて」
「やあん。ねえ、いっこたべてみてよぅ」
まだ疲れていないのだけど。
おねだりされて、大事に置いてあるお見舞いの小箱を開けると中身は薄紅のさくらんぼと黄緑のアンゼリカだった。ミュシカが自慢げに胸を張る。
「お父さまも、たべていいよ」
「え、僕は」
「ダニールさん、甘いの苦手ですか?」
「いえ。手が汚れていますから」
ダニールも仕事の合間に糖分を補給することはある。でも今は、馭者台の泥を払ったり手綱を握ったりしているので遠慮した。
「マルーシャちゃんに口に入れてもらえ」
後ろからイグナートが割り込んできた。その言葉にマルーシャはすごい勢いで振り返り絶句する。そんなことできない!
なのにラリサとミュシカも退路を断ちにかかった。
「ああそうね、せっかくのミュシカの気持ちだし、マルーシャが食べさせてあげてよ」
「お父さまお母さま、なかよしだもんね!」
馬車内からの圧がすごい。