かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「こんな所で強盗は待ち伏せません。ろくな獲物が来ませんから。ルスランとリージヤを連れ去った奴がこちらを狙ってくれるなら望むところです」

 犯人に接触できればそれが手っ取り早い。意外と好戦的なことを言われてマルーシャは目を丸くした。それをチラリとして、ダニールは申し訳なさそうに頭を下げた。

「大丈夫、あなたのことは守ります」
「おなじないで?」
「はい。人に見せてはいけないものですが、そんな場合なら仕方ないので」

 賊の足元をぬかるませたり、相手の馬を脅かしたり。この田舎道でなら、やりようはいくらでもある。
 マルーシャは想像して犯人に同情しそうになった。不可思議に見舞われ、さぞ恐ろしく感じるだろう。

「すごいですね……」
「マルーシャさんもすぐ覚えられると思います。あ、だけど人前で使うのは本当に気をつけて――薪を守ったのは、ぎりぎりの線でした」

 やや苦々しくそう言われると肩身がせまい。助けなきゃ、と思って慣れないことを勝手にやり、そのうえ風邪をひいたのだ。

「僕がそばにいる時は、まずいと判断したらおまじないを解きますので」
「え。人が掛けたのを無効化するなんてできるんですか?」
「もちろん」

 なんでもなさそうに言うダニールは、とても頼もしい。またドキンとして、マルーシャは自分の反応に戸惑った。ごまかすように微笑みを浮かべる。

「難しそうですね」
「あなただって、たぶんできますよ」

 マルーシャは口をつぐんで遠くをながめた。
 突然マルーシャから拒絶されたような気がして、ダニールは落ち着かない気分になる。何かまずかったろうか。
 でもマルーシャのその反応は、教師な時のダニールを思い出したせいだ。間近で見た真剣な姿を思い出すだけでなんだか心が乱れる。そんな自分にマルーシャ本人も困り果てていたのだった。

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