かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「駄々、てマルーシャ! ひどいな僕のことなんだと思ってるんだ」
「お父さんだと思ってる。いいトシして、シャンとしなさいよ」

 ピシャリと言い返し、マルーシャは膝の上のミュシカをなでた。

「ねえ? ミュシカがこんなに頑張ってるのに。おじさんがおかしいわねえ」
「お母さまのお父さま、おじさま?」

 妙な言い回しだが、考えてみればミュシカにとってクリフトは伯父か。

「伯父サマ……!」

 珍しい呼ばれ方にクリフトの胸がときめいた。こんな可愛らしい姪を前にヘタれているわけにはいかないのだ。

「ぼ、僕はただ、心配なだけだよ。マルーシャは嫁入り前の娘だしね、いくら親族とはいえ男性の迎えだなんて」
「そこは」

 慌ててダニールが片手をあげた。そんなことはないのだ。

「ちゃんと女性もおりますので、ご安心下さい。ファロニア騎士団員のイグナートと、その妻のラリサが宿で待機しています。どちらも僕の友人です」
「わたしがいくなら、お父さまだけじゃダメって。ラリサきてくれたのよ」

 あどけなくミュシカが告げ口し、マルーシャは笑ってしまった。預かった小さな姪っ子を四六時中お世話するなど、この学者然とした男性にいきなりは無理だろう。
 う、と言葉を詰まらせたダニールはやや恥ずかしそうにうつむき、早口になった。

「……まあそういう理由もありまして。マルーシャさんが来てくれるのなら、宿ではラリサとミュシカと同室にすることも、お一人部屋にもできます。馬車は侯爵家のもので、馭者は僕とイグナートが交代で務めます。もちろん旅費はすべて負担しますし、復路も同じようにお送りしてきます。いかがでしょうか」

 ダニールが並べる言葉はクリフトの反論の種をつぶしていく。ごく当然のことを述べただけだが、破格の好条件ではないぶん信用できた。特にマルーシャにとっては金がかからないのが何より嬉しい。
 クリフトも言い返しづらいのか声が小さくなった。

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