かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「ファロン侯爵……祖父に会うのはね。僕だって申し訳なく思ってたから、ありがたいよ」
「では」
「だけどさあ、〈春告げの姫〉のことは……マルーシャがそうだったとして、その後どこで暮らすんだい?」

 しょんぼりしつつもクリフトはゆずらない姿勢を見せた。
 だってクリフトは知っている。季節を告げる、その儀式はファロニアの侯爵邸で行われるのだ。

 故郷を出奔したアレーシャだったが、請われれば〈春告げの姫〉としての役目は果たすつもりがあったらしい。マルーシャがすくすく育つのを見ながら、「毎年みんなで旅行するのも悪くはないわ」と言っていたから。

「だけどそれはアレーシャだからだ。マルーシャはこれから結婚したり子どもを育てたりするかもしれないんだよ。毎年春が来るころ他所に行っちゃう嫁なんて嫌がられるじゃないか!」
「はい……確かに」
「そんなことでモテなくなったらどうしてくれるんだよ?」
「やめてよ、お父さん。元々モテてないんだし……」

 さすがに恥ずかしくてマルーシャはもぞもぞした。
 父の尻を蹴飛ばしかねない勢いがあるマルーシャは、同年代の男性から敬遠されていた。主婦っぽさがありすぎて恋を語る気になれないらしい。

「ええー? お母さま、かわいいよ」

 膝の上からミュシカがはげましてくれて、マルーシャは苦笑いだ。

「ありがとミュシカ。でも私、近所の男の人たちからは母親みたいだって思われちゃってて」
「わあ! なら、わたしのお母さまになろ? お父さまとけっこんしてよ!」
「は?」
「ミュシカ!」

 さすがのダニールもうろたえて制止した。

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