かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「え、じゃ、じゃあなに?」
「そうねえ」

 誠実。包容力。財力。腕力。
 一概には言えないし、ラリサにだって決めることはできない。
 だけどマルーシャになら、ダニールはこよなく似合いなんじゃないかとラリサは思う。つまりただの勘だけど。

「男性としてのダニールに少しでもときめくんだったら、少し考えてみてくれない? 私も友人の行く末が気がかりなのよ」
「……でも」
「ダニールのこと嫌い?」
「そんなわけないでしょ!」

 その問いに、マルーシャは即答した。そしてハッとなる。しまった。
 正直に言えば――素敵だなと感じてはいる。恋かどうかは知らないけれど。
 でもラリサはとても優しく微笑んだ。遅めの初恋に戸惑う若者をからかったりするものか。

「ちょっといいかも、て思ったら、進んでみればいいのよ」
「そうかなあ……」
「そうなの! 考え込まない!」

 ラリサの叱咤にマルーシャはブツブツ反論を試みる。

「私なんかずっと年下だし」
「ダニールも研究以外は子どもっぽいから問題なし」
「住んでる国も違うし」
「〈春〉を務めるならファロニアに移住したっていいでしょ」
「お父さんが独りになっちゃう」
「子どもはそのうち独立するものです。だいたいファロニアからアレーシャさんを連れ出したのはクリフトさんの方じゃないの。逆があっても文句は言えないわよ」

 その通りだ。
 妖精のアレーシャと恋をして、故国から奪い取っていったクリフト。両親たちのその情熱までもマルーシャは受け継ぐのだろうか。

「この人だ、と思ったら心に従わないと。でないと幸せなんて、すぐ逃げていくんだからね」

 そう言われるとマルーシャは反論できなかった。
 だってクリフトが手に入れた幸せ、愛した女性は十年かそこらでいなくなってしまったのだから。
 ただ共にいた時間はこよなく幸せだったはずで――自分もそうなりたいと考えたマルーシャの胸はうずいた。


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