かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
マルーシャは不思議な指示にまばたきしたが、ダニールの口もとを見つめた。
言葉なんて口から出てすぐ消えていくのに、「とらえる」なんてできるのだろうか。でもうながされるままに身がまえた。
ダニールが右の手のひらを自分の前に出し、おまじないを唱える。
「シュヴェルテ ジェリクルミナス」
するとダニールの手の上に、ポウと光が浮かんだ。
マルーシャは息をのんで灯りを見てしまう。ダニールが苦笑して、光は消えた。
「言葉をとらえて下さいと」
「あ――だってびっくりして。今のおまじないも初めてなんですもん。とても綺麗だったし、すごく便利!」
「ああ、これはわりと使いやすいおまじないで――じゃなくて、この灯りがともらないようにしてほしいんです」
「う。はい、頑張ります」
つい主婦根性を発揮しかけたマルーシャは唇を引き結んだ。それを微笑んでながめたダニールが、また小さく唱える。
「シュヴェルテ ジェリクルミナス」
「――ショズデーレ、カテナ ヨルダテーバ」
ダニールの声に耳を澄ましたマルーシャは、そこに生まれたおまじないをつかまえたような気がした。聞こえる音そのものではなく、揺らぎ。これまでも感じていたそれをつかむのだ。
するとポワ、とともりかけた灯りが薄れ、消える。
手のひらの上の暗がりを凝視して、二人は無言で立ち尽くした。
「――ダニールさん?」
これでよかったのかしら。おそるおそる声をかける。
すると微動だにしなかったダニールは、肩をふるふるしたかと思うと叫んだ。
「マルーシャさん――!」
「は、はい」
「成功です! いやすごいな、嘘みたいだ!」
丁寧語も忘れて興奮するダニールを見上げたら、間近に喜びに満ちた黒い瞳があった。その輝きに吸いこまれるようにマルーシャはダニールに見惚れる。
マルーシャの心臓が、トン、と打ちはじめた。
速まるわけでもないが、トン、トン、と大きく。それでマルーシャは得心する。
これが、「好き」という気持ちなんだ――――。
言葉なんて口から出てすぐ消えていくのに、「とらえる」なんてできるのだろうか。でもうながされるままに身がまえた。
ダニールが右の手のひらを自分の前に出し、おまじないを唱える。
「シュヴェルテ ジェリクルミナス」
するとダニールの手の上に、ポウと光が浮かんだ。
マルーシャは息をのんで灯りを見てしまう。ダニールが苦笑して、光は消えた。
「言葉をとらえて下さいと」
「あ――だってびっくりして。今のおまじないも初めてなんですもん。とても綺麗だったし、すごく便利!」
「ああ、これはわりと使いやすいおまじないで――じゃなくて、この灯りがともらないようにしてほしいんです」
「う。はい、頑張ります」
つい主婦根性を発揮しかけたマルーシャは唇を引き結んだ。それを微笑んでながめたダニールが、また小さく唱える。
「シュヴェルテ ジェリクルミナス」
「――ショズデーレ、カテナ ヨルダテーバ」
ダニールの声に耳を澄ましたマルーシャは、そこに生まれたおまじないをつかまえたような気がした。聞こえる音そのものではなく、揺らぎ。これまでも感じていたそれをつかむのだ。
するとポワ、とともりかけた灯りが薄れ、消える。
手のひらの上の暗がりを凝視して、二人は無言で立ち尽くした。
「――ダニールさん?」
これでよかったのかしら。おそるおそる声をかける。
すると微動だにしなかったダニールは、肩をふるふるしたかと思うと叫んだ。
「マルーシャさん――!」
「は、はい」
「成功です! いやすごいな、嘘みたいだ!」
丁寧語も忘れて興奮するダニールを見上げたら、間近に喜びに満ちた黒い瞳があった。その輝きに吸いこまれるようにマルーシャはダニールに見惚れる。
マルーシャの心臓が、トン、と打ちはじめた。
速まるわけでもないが、トン、トン、と大きく。それでマルーシャは得心する。
これが、「好き」という気持ちなんだ――――。