かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~

たどり着いた手がかり

  ✻ ✻ ✻


「わあい、おかいもの! お母さまをかわいくするの!」
「えええ、ミュシカ……」

 翌朝、ミュシカはウキウキとのたまった。今は女性陣の部屋に五人全員が集まり、今日の予定を確認しているところ。

 ミュシカがとにかくにぎやかにしたがるのは、気をまぎらわすためではないかとダニールは言う。前はもう少し落ち着いた子だったと苦笑いされた。
 ミュシカの好きなきらびやかな店に、マルーシャはあまり慣れていない。これは今日も疲れそうだなと思った。ミュシカのためなら仕方ないけど。

「まだお店が開いてないのよ」
「あ、そうか。じゃあわたしも、お母さまがやったおまじない、おべんきょうしたい!」

 今度は真面目な顔をする。マルーシャが新しいおまじないを成功させたと聞いて、うらやましいのだった。大好きなお母さまの真似はしなくちゃならない。
 だが朝っぱらから授業を頼まれたダニールは迷った。
 ミュシカに〈ショズデーレ、カテナ ヨルダテーバ(言葉よ力を喪え)〉は早いだろうか。心も技も不安定な少女が使い、うっかりいろいろなものが力を喪うことになったら目もあてられない。

 とにかく強い力を秘めているという点なら今いる中でミュシカが一番かもしれないのだ。マルーシャも敵わない可能性があるとダニールは考えていた。
 深く深く世界とつながるミュシカ。
 暴走した時に抑えきる自信はダニールにもない。

「――そうだね、ミュシカにはちょっと違うのを教えよう」
「どんなの?」
「〈冬〉らしいものだよ。おまじないを眠らせる(・・・・)んだ」

 ショズデーレ、シュクテ イ コリド(言葉よ揺りかごで眠れ)

 一時的におまじないを無力化することができる……はずだ。ダニールも実は未使用の文言だった。
 冬。包みこみ、眠りの中で育てる季節。
 だからこのおまじないならミュシカと相性がいいのではないか。それにうっかり広く効果を及ぼしてしまっても、目覚める(・・・・)方向性のおまじないを重ねれば挽回可能だろう。

「ショズデーレ、シュクテ イ コリド。うん、わかった」
「待て待て。まだやるな」

 気軽にコクンとうなずかれてあわてるダニールに、マルーシャはふふ、と笑ってしまう。ミュシカのような幼い子の教師はたいへんそうだ。

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