かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「お父さま?」
「ダニールさん、何かまずいことでも?」
「――ミュシカごめんよ、練習は後だ。イグナート」
「おう」
「えー、つまんないの」
「本当にごめん、おまじないはまた今度。マルーシャさんミュシカをお願いします」

 申し訳なさそうにされてマルーシャはうなずいた。
 ダニールがそう言うのなら、きっと何か大切なことを思いついたに違いない。子ども相手だからといいかげんなことをする人ではないと、もうわかっていた。



 ザラエのメレルス。
 確かにそんな名の商人が酒場で話に出た。ザラエはそう遠くない町だ。だがそれがロジオン・メレルスなのかはわからない。

「おまえが昔、恥をかかせたメレルスと、ザラエの商人のメレルスが同一人物だとして、だ」

 隣室に戻り、イグナートは話を整理した。

「その恨みでおまえを探ってて、〈冬〉の情報を知ったってことか?」
「……かもしれない」

 ダニールは悄然とつぶやいた。
 犯人は最初から冬告げの姫を探していたわけではなく、ダニールへの意趣返しがしたかっただけなのか。そして偶然見つけた〈冬〉に利用価値をみとめて連れ去った。それならば、すべてはダニールのせい。
 リージヤは本物の冬告げ姫ではないが、ダニールへの復讐という点では成功したといえよう。弟夫婦が姿を消してダニールは心を痛めているし、ミュシカを背負うことになってしまったのだ。

「ずいぶん暗いことをする奴だな」

 ズウーンと落ち込んだダニールに、イグナートは笑ってみせた。もしそうだったとして、ダニールはその時できることをやっただけ、他にどうしようもない。

「まず、その商人がロジオン・メレルスなのか調べてみよう」

 今日の聞き込みの目当てができて良かったぜ、とイグナートはうなずいてくれた。


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