かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
みんなで街に出てもダニールの表情は暗かった。何やら考え込んでいて、後ろからついては来るが一言も発さないのだ。
マルーシャは店に入るより街並みを楽しんでいたかったのだが、今日の主役なのでラリサとミュシカの着せ替え人形にされていた。ダニールは店の外で待っていて服について意見を訊くこともできない。どうせ頼りになるわけないが、ラリサは文句を言った。
「……あの態度はひどくない? 何があったのよ」
「悪い、あとで話すから」
夫婦がこそこそ言い合っている。ミュシカに聞かせたくない話――つまり誘拐犯に関することなのだとマルーシャは確信した。
そして服や靴を選び終わり広場で休憩しようとしたところ、ダニールは思い詰めた声でマルーシャを呼んだ。
「すみませんマルーシャさん――僕に、アクセサリーを贈らせてもらえませんか」
「――は、い?」
ぽかんとするマルーシャの横でラリサも息をのんだ。
男性から女性にアクセサリーを贈る。その意味は、さすがにダニールだってわかっているだろうに。
「やん! お父さま、あいのこくはく?」
「え――? あ、いや、うわ!」
喜色満面のミュシカの声にダニールがハッとなり、大人たちはガックリした。マルーシャも止まりそうになっていた呼吸を再開する。ううん、どうせそんなことだろうと思ったけど!
「ダニールさん……」
「あの、あの本当に申し訳ない。そういうつもりではなくてですね」
「わかってますよ、何か理由があるんでしょう? ええと……こそっと教えて下さい。こっちで」
ミュシカをおもんばかってマルーシャはその場を離れた。しょんぼりとついてくるダニールが大型犬のようで笑えてしまう。
マルーシャは笑顔で振り向いたのに、不安そうなままダニールはあらためて謝罪した。
「すみませんでした。これだから僕は駄目なんですね」