かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 マルーシャに危害が及ぶ可能性を思いついて、ダニールは心臓が凍りそうになったのだった。その気持ちがなんなのかとは考えずに提案する。

「アクセサリーは、お守りにしたいんです」
「お守りですか」

 首をかしげたマルーシャに、ダニールは真剣な表情だった。

「ミュシカがいつも、紅い石を身につけていますね?」

 それはマルーシャも知っている。昼間は首飾りにし、夜は寝間着のポケットに入れて、必ず持っているようにとダニールにしては珍しくきつく申し渡してあった。

「あれは僕とつながっています。ミュシカに何かあって僕の追跡を阻害する術を使われても、あれと僕とを断ち切ることはできない」

 術、とダニールが言った。
 相手のしてくることが、〈おまじない〉ではなく〈術〉の域に達すると考えているのだとマルーシャにもわかった。それほどの手練れが相手ということ。

「そのお守りを、私にも?」
「そうです。あなたは〈春〉ですし……それに元が僕への恨みなら、マルーシャさんが狙われてもおかしくない……はたからは、妻だと思われているかもしれないでしょう」
「あ」

 何しろ「お父さま、お母さま」だ。ベルドニッツでもさんざん結婚するのかと冷やかされたのを思い出してマルーシャはほんのり赤くなってしまった。それを見てダニールも狼狽する。

「その、とても失礼なのは重々承知なのですが」
「失礼だなんて、そんなこと。光栄です」
「は、はあ。そうですか嬉しいです」

 二人は互いに言いつのりながら、モゴモゴとうつむき黙ってしまった。



「……なあ、あいつら照れ照れして何やってんだと思う? ほんとにプロポーズとかしてんじゃねえだろな」
「そんな甲斐性がダニールにあったら、もう雪が降るわよ」
「わたし、ふゆはよんでないよ!」

 離れた場所から様子をうかがって、三人は無責任な感想を述べ合った。

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