かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
昼になり、そろそろ街が動き出したからとイグナートは独り別れていった。ザラエに本拠地を置く商人、メレルスのことを調べに行くのだ。
マルーシャたちはあと少し買い物を続ける。服を買ったなら合わせて靴下や下着も見るべし、とラリサの厳命だった。
さらにダニールから注文の、宝飾品店というミッションも加わっている。そんなに自分の物を買うだなんて、元が倹約家のマルーシャにとっては軽い拷問だった。
「ううう……お買い物苦手……また寝込みそう……」
もう嫌になったマルーシャがうめいてみせると、ダニールは真面目に眉をひそめた。
「まだ本調子じゃないんですね。そうだ、暖かい部屋着としてガウンも必要なのでは」
「そういうことじゃないです! こう……何? 言い回しっていうか冗談っていうか」
「冗談なんですか? 難しいな……」
真剣に考えこむダニールの難しさが通常と違うところにありすぎてマルーシャは頭を抱えた。ラリサは大笑いしつつガウンは買おうと決心する。寝間着の細腕に困惑したダニールの提案は採用せねば。
増えた買い物リストにマルーシャがげんなりしていると、ダニールが懇願した。
「でもお守りにする石は必要なんです。あなたに何かあったら僕はどうすれば」
「ちょっとダニール、それ愛の告白にしか聞こえない。マルーシャも困ってるしミュシカがワックワクなんだけど?」
ラリサの指摘でダニールは言葉を詰まらせた。見ればマルーシャがほてほてと頬を赤くし、隣でミュシカは瞳を輝かせている。
「……し、失敬!」
「いえ……心配してもらえて嬉しい、です」
マルーシャは細い声でつぶやいたが、とても複雑だった。