履歴書からの一目惚れ〜若き社長は小悪魔メイクがお気に入り〜
「ちょっと角度変えて〜」
立ち位置を変えて万珠のベールで隠しながらキスをしているようにカメラマンに見せる。
「万珠…」
「ん?」
貴明に呼ばれて視線ごと頭をあげると、ヴェールがあるのをいいことに貴明に口唇にキスをされたのだ。
「何すんのよ!」
「しーっ、もうちょっとだから」
カメラマンからはキスの振りとしか思ってないはず…
「OKです、お疲れ様でした」
2人は頭を下げて「お疲れ様でした」と挨拶をした。
「万珠、良かったよ」
「万珠は最低なんだけど」
「肉でも食いに行く?」
「行かない、帰る」
万珠は長いドレスを持ち上げた。
「そんなに怒んなよ、キスくらいで、初めてじゃないだろ?」
「そういう事じゃないし、実際にするなんて最低って言ってんの、言われてないじゃん」
「モデルだって演技は必要だよ、万珠がモデルの仕事を舐めすぎだよ」
「だ、か、ら言われてないじゃんて言ってんの!」
万珠はカツカツとヒールの音をさせながらスタジオを出た。
着替えをして、メイクを落とす。
マネージャーに電話をして、貴明との仕事を入れないでと伝えた。
理由を聞かれたが後で言うととりあえず切った。
スタッフに挨拶をして万珠は帰って行った。
悔しい、悔しい、悔しい…
歩きながら万珠は涙が出てきた。
気づいたら万珠は慧介のマンションの前にいた。
どうしよう、無意識に来ちゃった、自分で行かないって言ったのに…でも…
万珠は思い切ってインターフォンを押した。
留守なのかすぐに返事はなくマンション前で待っていた。
30分、30分だけ…
万珠はしゃがみ込んでマンション前に座っていた。
貴明なんて嫌い…大っ嫌い