極貧孤児に転生したので、親を探して文句を言おうと思う
 真横から湯気の立つカップが突き出され、私は一拍置いてそれを受け取る。夢中になっていたせいでアルベール様が隣に来たのに全然気づかなかった。

「大変ですね、上に立つ方々も」
「なれれば楽なものさ。皆、こんな若造の言葉によく従ってくれている。君こそ、色々な人とうまくやれているじゃない。貧民街にいた彼らとか」
「あはは、あれは私じゃなくてラトラさんが……」

 他愛もない話を交わす中、紅茶が夜気で冷えた私の身体を温めてくれる。
 周りでも、警戒に当たる傍ら、仲間と語らう兵士たちの笑い声が時折聞こえてきた。

「見えるかい。あの緑の星がシェルジア、豊穣の神だね。あっちの赤いのが、灼熱の神グズエルトで、シェルジアとは犬猿の仲と呼ばれ、時々ぶつかって火花を散らすんだ。あの、青、赤、黄と連なる三ツ星は、サンとヨーとリメル。全能の女神メディスの息子たちで、三人でいつも仲良く天界を引っかき回してるんだとか。それから――」

 私がこの世界の星々について興味を持つと……隣に腰を下ろしたアルベール様はカップを片手に空を指差し、説明をしてくれた。どうやら目立つ星々はいずれも神様の化身だとされ――それぞれ信仰の対象となっているみたい。

 それから、あんまり星が多くて空が明るいせいか気付かなかったけれど、この世界の月は……黒い。夜空をバックにまるで一箇所がくり抜かれたように――光を映さぬ真円が、日中は姿を現さず、夜になれば忽然と姿を現す。

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