極貧孤児に転生したので、親を探して文句を言おうと思う
 私はアルベール様が呼んでくれた馬車に乗り込み、大きく手を振って住民に別れを告げる。街中を移動する間にも、できるだけ笑顔を絶やさずに不安を見せないように……。

 この国の聖女としての役目は果たせただろうか。農場主のお爺さんに見送られた後――私は居てもたってもいられずアルベール様の袖を掴んだ。

「だ、大丈夫なんですよね王国は? だって、こんなに平和で……。いきなり状況が変わったりなんて……あるはずが」
「シーリ、気を強く持って……。そうさせないために僕らがいるんだ」

 共にこの国を守ろう――そう言いつつも、無事を断言できないアルベール様に、私の胸の微かな不安は居座り続ける。

 こうなれば一刻も早く聖都に戻り、詳細を知ることだ。
 祈り、そして力を尽くすしか……大切な人たちの命が、軽々しく奪われないように。

 昨晩、私たちを恐怖に落とし込んだたったひとつの事実。
 この聖王国を――これから数百年越しの恐ろしい戦禍が包もうとしていた。
< 446 / 840 >

この作品をシェア

pagetop