極貧孤児に転生したので、親を探して文句を言おうと思う
 そう命じながら、自らも氷の上に降り立つヴィーナ。だが彼女はその途端滑ってバランスを崩し、盛大に後頭部を打ち付けた。

 一方アルベール様は、スイスイと滑るように氷上を駆け、あっという間に川の半分を渡り切る。

「す、すごい……滑らないんですか⁉」
「急峻な崖を下ったりもするから、聖力を留め具のように扱う技術も習得済みだよ。さすがに彼女では、そんな繊細なコントロールはできないはず。もう追ってこれないだろうね」

 なるほど、さすが聖騎士団。さっき民家の上にを警戒に移動したのもそのあたりの鍛錬の賜物なのかも。河に浮かぶ船も船底が凍結しているのか動かせず、慌てて駆け降りこちらに向かう兵士たちも、誰ひとり追いつけそうな者はいない。

「きっ、貴様ぁぁ……待ぁてぇぇぇ! あぎゃっ!」
「……っぷぷっ」

 ちょっと走ってはごろごろ転んで身体をあちこち打ち付けるヴィーナに、私は不謹慎ながらも笑ってしまう。だってあのハイヒールじゃ絶対氷の上を走るの無理だよ。まるでスケートを覚えたての子供みたいで、綺麗にセットした髪や化粧がもうぐっちゃぐちゃ。
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