男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
午前の授業が始まってから、一度も周囲を見なかった。
黒板の文字を写し、先生の言葉を聞き、ノートを取る。
それだけに集中していれば、余計なことを考えずに済む。
けれど、教室の空気は、朝に教室に入った時と変わらず、落ち着かない。
視線。
ひそひそと話す声。
私の席の方を見て、すぐに逸らす。
それには、気づいていないふりをした。
……慣れている。
注目されるのは嫌いだ。
でも、嫌でも目立つ。
首席で特待生。
そして、男としては整いすぎた顔。
それがこの学園での自分の立場なのだと、理解していた。