男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。

授業が終わり、休み時間になった瞬間、教室のざわめきが一気に膨らんだ。


椅子が引かれ、立ち上がる音。

笑い声。

窓が開けられて、風が吹き込んでくる音。


私は席を立たずに、窓の外を見た。


春の光が眩しい。

校庭の緑が揺れ、遠くの空には薄い雲が流れている。



――空は、どこにいても同じだ。

私はその景色を眺めることで、心を落ち着かせていた。


そのとき。


「……ねえ」

背後から声がした。


肩がわずかに跳ねる。

反射的に眼鏡を押し上げて、振り返った。

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