男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
目の前に立っていたのは、同じクラスの男子だった。
制服はきちんとしているが、表情は少し引きつっている。
「……月城、だよな?」
緊張しているのか、少し戸惑っているように聞いてくる。
『……月城です』
小さく頷いて、なるべく低い声で返した。
その返事に、男子は少し驚いたように目を丸くした。
想像より声が低かったのかもしれない。
「お前、特待生なんだろ?すげーよな。……えっと、俺翔吾、伊藤翔吾。よろしく」
一瞬だけ言葉に詰まった。
“よろしく”と言われたのは久しぶりだった。
どう返せばいいか分からず、短く言った。