スパダリ救急医はシンデレラと双子ベビーに深愛を注ぐ
 この辺りは都下のなかでは下町っぽさが色濃く残っている。庶民的な商店やスーパーも多く、暮らしやすい街だ。
 三人で暮らすアパートは、職場の汐浜病院にも近く徒歩十五分の距離。真夏や雨の日はバスを使うけど、普段はベビーカーを押して通勤している。

(便利なエリアに部屋を借りられて本当によかった。唯一の懸念は……〝彼〟の職場とちょっと近すぎるとこだけど)

 五年前に別れたきりの彼――柚木奏真の面差しが脳裏に蘇る。

 ふわりと柔らかな髪、穏やかな光をたたえた琥珀色の瞳、記憶のなかの彼はいつも光莉を慈しむように優しくほほ笑んでいる。
 パーツだけを見れば自分に似ている部分もあるけれど、やはり北斗と南斗の気品ある顔立ちは父親にそっくりだ。日本人としては珍しいほどの色素の薄さも奏真譲りなのだろう。純日本人顔で、カラスの羽のような真っ黒な髪を持つ光莉にはないものだ。

 自分の血を引く息子がふたりも誕生している事実を彼は知らない。奏真には黙ったまま出産したから。彼にも子どもたちにも申し訳ないと思ってはいるものの、この秘密は一生自分の胸に秘めておくと決めていた。だから、奏真と再会するのだけは絶対に避けたい。

(柚木くんはきっと今も、あそこに勤めているよね?)

< 11 / 28 >

この作品をシェア

pagetop