スパダリ救急医はシンデレラと双子ベビーに深愛を注ぐ
 高級住宅街として知られる品川区御殿山のお膝元にある『柚木記念病院』は、都内でも屈指の大病院。彼はそこの御曹司でもあるので、おそらく転職はしていないだろう。
 同じ区内……ふと押し寄せた不安を、ブンブンと頭を振って断ち切った。

(大丈夫よ。品川区は広いし、東京にはこれだけの人がいるんだもの。偶然会う可能性なんかゼロに近い)

 それに、万が一再会したとしても……彼はもう自分と話をする気もないだろう。それどころか、気づきさえしないかもしれない。

(あの彼女と結婚して、今頃は幸せな家庭を築いているわよね)

 奏真はきっといい夫、そしてよき父親になるだろう。
 ふたたび同じ街で暮らしたからといって、彼と自分の道はもう二度と交差しない。
 
 結局、商店街のお肉屋さんでコロッケを、スーパーではオムライスの材料を買った。ママのオムライスはマサのカレーに次ぐふたりの好物だから。

「あ、パトカーの音!」

 アパートが近づいてきたところで、北斗がピクンと耳をそば立てた。

「きゅうきゅうしゃも! 近くにいるよ~」

 南斗の声も続く。最近のふたりは働く車をテーマにした絵本がお気に入りで、街中で聞くサイレン音に光莉よりも敏感だ。

「本当だね。どっちの音もしてる。なにか事件でもあったのかしら?」
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