スパダリ救急医はシンデレラと双子ベビーに深愛を注ぐ
 おまけに、音の発信源は自分たちの家の方向のようだ。なんだか嫌な予感がして、光莉は足を速めた。

「……う、嘘でしょう?」

 目の前に広がる光景に、思わずあんぐりと口を開ける。
 上京して四か月。決して豪華ではないけれど住みやすいよう整えて、やっとなじんだ我が家が……狂暴にうねる黒煙に包まれていた。鼻の奥がギュッとなる、焦げた匂いもする。
 一階はまだ無事のようだが、光莉たちの部屋のある二階はかなり火の手が回っている。築年数の古い、木造アパートだったのが災いしたのだろう。

(あぁ。北斗の宝物のマリンレンジャーのベルトも、南斗が大事にしてるキリン柄のブランケットも、それから……)

 パニック状態だった光莉の思考が、やっと一番大切なところに行き着く。

「お隣のおばさま!」

 なによりも気にすべきは人命だ。自分たちは家族揃って不在だったから不幸中の幸いだったけれど、いつも親切にしてくれる隣人の安否が気になった。
 六十代のひとり暮らしで、右足が少し不自由だから、外出はほとんどせず自宅で過ごしていると聞いていた。

「大丈夫だったかな」

 光莉はキョロキョロと首を動かす。パトカーと救急車より先にすでに消防車は到着していたようだ。たくさんの消防士が慌ただしく走り回っている。

「あ、あそこ!」
「おばあちゃんだ!」
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