スパダリ救急医はシンデレラと双子ベビーに深愛を注ぐ
 五年前、光莉はなんの説明もなしに一方的に彼に別れを告げた。もし逆の立場だったら、自分は絶対にこんなふうに笑えないだろう。
 冷たく無視するか、あるいはひどく罵るか。彼にはそうする権利があるのに、まるで何事もなく旧年来の友人のように光莉に接してくれる。柚木奏真はそういう人なのだ。

(あぁ、本物の柚木くんだ。どこも変わっていない)

 懐かしさに目頭が熱くなった。
 彼がスタッフを呼び、注文を済ませる。パフェにロイヤルミルクティー、それから奏真のホットコーヒーと軽いおつまみも追加してくれた。

「さて」

 言って、奏真は光莉がかたわらに置いていたエコバッグに目を走らせる。中身は総菜のコロッケとスーパーで買った夕飯の材料。病院への来訪が予定外のアクシデントであったと、それを見て察したのだろう。彼は心配そうに眉をひそめた。

「どうしてうちの病院に?」
「その、実は――」

 親しくしている隣人が火災に巻き込まれ、緊急搬送された。彼女はひとり暮らしだったため成り行きで自分が救急車に同乗したのだと、光莉は説明する。

「あの火災、光莉が暮らすアパートだったのか」

 火災があった件は奏真も聞き及んでいたらしいが、光莉がそこに住んでいる事実にはかなり驚いていた。

「無事でなによりだけど、かなり延焼したと聞いたよ。光莉の部屋は大丈夫なのか?」
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