君にメノウを贈る時
(あ〜、暇だな……)

琥珀はスマホでぼんやりと動画を眺めていた。高校卒業後、琥珀は父の知り合いが経営する会社に就職が決まっている。自動車学校にも通っているのだが、今日は自動車学校の講義などは入っていない。

(一は今、何してるんだろう)

バレエの練習でもしているのだろうか、と琥珀は想像を膨らませる。美しい衣装に身を包み、スポットライトが照らす大きな舞台で珊瑚が踊り舞う。琥珀はバレエのことは何一つわからない。しかし、きっと美しいのだろうと思った。

(見てみたいな。あいつのバレエ)

芸術など、琥珀は普段興味を示さない。オペラも美術品も琥珀にとってはつまらないものだ。しかし、そこに珊瑚がいれば話が変わってくるのが恋の恐ろしいところだ。

(LINEでもしてみるか)

琥珀がそう思った時だった。自室のドアがノックもなしに乱暴に開けられる。驚いた琥珀がドアの方を見ると、姉の瑠璃(るり)が立っていた。

「な、何だよ姉ちゃん!勝手に開けんなよ!」
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