虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 これだけは、よくわかる。
 彼が本気で己を心配し、慈しんでくれるのだと。

「気になるか。第5王子が、我が国にやってきた理由」

 だからこそ。
 エクリーユは何度か真紅の瞳をさまよわせたあと、こくんと頷いた。
 彼は一度深く息を吸い込んだあと、静かに告げた。

「大したことではない。あいつは、和平条約の一方的な解消に異を唱えにきた、使いっ走りだ」

「対話をする気、あったのね……」

「ああ。王のすげ替えが行われたからな」

 脳筋の兄たちが全員、王の座を辞退したとは到底思えない。
 父が王座から退いたのであれば、長男がその椅子に腰を下ろしたと考えるべきだ。

(第1王子に命じられたのなら、イトゥク兄様が逆らえないのも無理はないわね……)

 エクリーユを取り戻そうとしている行動は気がかりではあるが、陛下は自分を守るといいながら、たくさんの愛を注いでくれる。
 今はその愛を、信じたかった。

「エクリーユは、なぜ花壇迷路にいたんだ。それも、随分と薄着だったようだが……」
「そ、それは……」

 少女は自身の格好を思い出し、ほんのりと頬を紅潮させる。
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