虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「簪だ。長い髪を、纏めて束ねる」

「こんな、鋭利な刃物を……? 髪に……?」

「ああ」

「寝返りを打ったら、頭に突き刺さってしまいそうで怖いわ……」

「外出時には、己の身を守る武器となる。エクリーユにピッタリだと思ったんだが……」

「陛下のご厚意は、とても嬉しいわ。でも、これはちょっと……」

 エクリーユは体力づくりのために外へ出ることはあっても、ほとんどの時間をリドディエの寝室で過ごす。

 気がついた時には眠っている時も多いため、彼の手にした装飾品を身に着けようものなら、知らず知らずのうちに寝台の上で流血沙汰が起きてしまいそうだ。
 難色を示す婚約者の姿を目にした彼は、それを贈るのは諦めたらしい。

「なら、こちらは?」

 次にリドディエが差し出して来たのは、黒と緑、ピンクや紫といった色鮮やかな印象を与えるミイロタテマイの蝶が象られた髪留めだった。
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