虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「エクリーユ……!」

 ――ここにいるはずがない人物の声が聞こえてきたからだ。

 少女の背中からは轟々と勢いよく燃え盛っていた炎が霧散し、エクリーユの表情は絶望に染まる。

(あなたにだけは、見られたくなかった…………)

 兄妹の中で唯一、自分を虐げたり見て見ぬふりをすることなく庇ってくれた人。
 どこにでもいる普通の家族のように、妹として慈しんでくれた。

(大切で、失いたくなくて、守りたい人。だから、あなたがいない時に彼らへ復讐をしようと決めたのに――)

 あと少しで全員に復讐できると言うタイミングで、大好きな兄が騒ぎを聞きつけ、親友とともに姿を見せてしまった。

(私はもう、終わりだわ……)

 呆然失意に陥ったエクリーユが見せた隙を、妹が見逃すはずがない。
 リシーロはムガルバイトの胸元へ勢いよく飛び込み、助けを求めた。

「ムガルバイト兄様! エクリーユが! 皆を燃やして……!」
「なんだって……?」

 困惑する兄は2人の妹を見比べ、どちらを信じるべきか迷っているようだ。

 エクリーユは、よくわかっていた。
 自分にたくさんの愛を一心に注ぎ込んでくれたのは、ムガルバイトが博愛主義だからだ。
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