虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 異能に目覚めた己が、家族を襲ったのは事実。
 この状況で少女を庇うはずがないと。

(お兄様に、嫌われてしまったわ……)

 今さら取り繕ったところで名誉回復は望めない。
 ならば、彼女に対する憎悪を隠す必要もないだろう。

(もう、何もかもがどうでもいい……)

 家族を傷つけたエクリーユには、自らの罪を認めて引き返す選択肢など存在しないのだから――。

「私のお兄様に、触らないで……!」
「きゃあ!」

 怒りを露わにした少女は、最愛の兄と妹を引き離すために炎を放つ。

 彼女は咄嗟に白百合の花を纏わりつかせて己の身を守るが、植物たちはすぐさまリシーロの代わりに灰となって散る。

(花々には、申し訳ないけれど……)

 エクリーユは苛立ちを隠せない様子で柄悪く舌打ちをすると、真紅の瞳に憎悪の炎を燃え上がらせた。

(次々に捕らえられ、傷つけられていく家族たちを前にして恐怖心を煽り、自分の番がいつやって来るのかと絶望に染まるあの女の姿が見られた……。それは僥倖だったけれど。全然、足りないわ……!)

 世界で一番、誰よりも憎い妹に一生消えない傷を植えつけることに失敗したエクリーユは、瞳から大粒の涙を流しながら兄に懇願する彼女に冷たい視線を向ける。
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