虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(こういう時、テラマがいてくれて本当によかったと思うのに……)

 今はその優しさが、ありがた迷惑でしかない。
 ムガルバイトに嫌悪をいだいている彼が己の傷ついた姿を見れば、きっと心を痛めるだろう。

(私は陛下に、笑っていてほしいわ……)

 自分は彼に、迷惑をかけてばかりだ。

(こんな私なんて、いないほうがいい……)

 負の思考に飲み込まれたエクリーユは、何かに突き動かされるように黒猫を離す。

「にゃあん!?」

 少女はよろよろとおぼつかない足取りで立ち上がる。
 再び窓を開け放つと、獣が足元で己の足首を引っ掻く痛みすらも気に留めた様子もなく、外に向かって身を乗り出す。

「なぁん!」

 小動物は必死にエクリーユを止めようとしたが、小さな身体では静止をしきれず――。

(リドディエ様……。私はあなたと一緒に過ごせて、幸せだったわ……)

 こうして王女は人知れず彼に対する謝辞を並べ、再び命を投げ出そうと試みた。

「ひっ!?」

「エクリーユ!」

 しかし、またしても邪魔が入ってしまう。
 少女が身を投げるよりも、乳母が陛下を呼んでくるほうが早かったのだ。
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