虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
『イトゥクの異能は、本当に使えねぇからな~。どんなものでも腐敗させられる力とか、使えるところが限られているだろ』

『蘇らせられる力であれば、利用価値があったんだが……』

『無能が生まれてくれたおかげで、命拾いしたな?』

 エクリーユはワンスとフォセティの会話を思い出しながら、つい最近イトゥクがこの国にやってきた時の姿を脳裏に思い浮かべる。

(あの時、この木に異能を発動させたのね……)

 リドディエとこの木を一緒に見た時に感じた違和感は、正しかったのだ。

(もっと早く、異変を陛下へ報告していれば……)

 少女は気のせいかもしれないと勝手に判断して、自分の中だけに留めておいたことをひどく後悔した。

(王族がどんな異能を持っているかを触れ回るのは、重罪だわ……)

 シンボルツリーに起きた異変をひと目見ようと、この広場にはたくさんの人が集まっている。

 いくら相手が大嫌いな人間であったとしても――己が口を滑らせた結果悲劇が起き、こちらのせいにされては堪らない。
 エクリーユは彼と2人きりになってから報告しようと考え、地面に根ざしたまま腐敗してしまった切り株のほうをじっと見つめた。
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