虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(ここにいるのが私ではなく、妹なら……)

 リシーロは、植物を使役する異能を持っている。
 彼女であれば、きっとこの大木を元の場所に戻すように働きかけることが出来ただろう。

 しかし、ここにいるのはエクリーユだ。
 憎しみの感情によって炎を増強させるしか脳のない、無能ではなくなったけれど有能とは言えぬ存在。
 それが自分だった。

「エクリーユ。力を貸してくれないか」

「私の……?」

「ああ。君の炎は、すべてを燃やし尽くす地獄の業火だ。倒れ伏した邪魔な木も、灰にできるかもしれん」

 リドディエの提案を受けた少女は、彼に頼ってもらえたのが嬉しいと思うと同時に、本当にこの木を跡形もなく燃やしてしまっていいのかという疑問をいだきながら、難色を示す。

「この国の、シンボルツリーなのよね……? 元に戻したほうが……」

「根元から腐敗している以上、接ぎ木をしたところでうまくは育たないだろう。ここには、新たな木を植える。今は、一刻も早くこれを処分したい」

「私、が……」

 妹ならば元に戻せる。
 だが、姉である自分は灰にしか出来ない。
 しかし、リドディエがそれを望んでいるのならば――迷う暇などなく、今すぐに行動するべきだ。
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