虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「わかったわ」

 エクリーユは小さく頷くと、地面の上に下ろしてもらう。

 ――大きく息を吸って、吐いて。

 気持ちを整えてから、右から左に向かって左右に手を振った。

「木の周りから、距離を取れ」

「はい!」

 陛下の命令を受けた騎士たちは、広場に集まっていた住民たちに声をかけて倒木から遠ざけた。

(これだけ距離を取ってもらえれば、誰かを巻き込む心配はないわね……)

 エクリーユは両手を広げ、己の身に炎を纏わせる。
 そして――勢いよくそれをシンボルツリーに向けて放つ。

「うぉおお! すげぇ! 御神木が炎に包まれていくぞ!」

「さすがは王族だ!」

「なんて美しい光景だろうか……!」

 至る所で、再び歓声が上がる。
 しかし、エクリーユの心が晴れることはない。

(灰にならないわ……)

 物理的な攻撃が無効化される異能は、かなり強力なものだったからだ。

(もっと、炎の勢いを強めなければ……)

 ――そのためには、強い憎悪をいだく必要がある。

 少女は家族に対する怒りを再燃させ、どうにか倒れ伏した大木を燃やし尽くそうと試みた。
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