虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「あの男のほうがいいと言われたら、どうしようかと思った」

「言わないわ。だって私、あの人よりもあなたのほうが好きだもの」

 昔の男よりも今の自分が好きだと言われて、喜ばない人間はいないだろう。
 彼は紫の瞳を優しく和らげると、少女を抱きしめる力を強めた。

「ああ……。僕の黒百合……」

「名前で呼んで。リドディエ様」

「エクリーユ」

 リドディエは極まった様子で、少女に愛を叫ぶ。

「君を心の底から、あ――」

「陛下!」

 しかしそれは、突如乱入してきた彼を呼ぶ騎士の声によって阻まれる。

(どうして愛を囁こうとすると、邪魔が入るのかしら……?)

 エクリーユが不愉快そうに真紅の瞳を歪めていれば、「そんな顔をするな」と言わんばかりに彼が言葉の続きを発する。

「愛している」

 その単語が聞けただけで、満足だ。

(まるで、魔法のようだわ……)

 憂鬱な気持ちが、一瞬で吹き飛んだ。

(私に必要だったのは、異能ではなくて……。自分に無償の愛を注いでくれる人だったのかもしれないわね……)
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