虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 男の名は、リドディエ。
 隣国を治める王であり、己が優越感に浸るために散々最愛の妹の話を言い聞かせてきた道具のような存在だった。
 彼はエクリーユを抱き留め、そのまま転移魔法を使って彼女を連れ去ってしまう。

 なんの打ち合わせもなく、息のぴったりと合った奇跡の連携プレーをお見舞いしてきた奴らのせいで、ムガルバイトはいつの間にか、王に仕立て上げられてしまった。

(俺の計画が成功していれば、今頃……。エクリーユは自分だけに、笑いかけてくれたのに……)

 今ではその権利は、彼女の婚約者を名乗るリドディエに奪われている。

『リドディエ様』

 最愛の妹が親友の名前を呼ぶ姿は、何度目にしても腸が煮えくり返るほど不愉快で仕方がない。

『ムガルバイト兄様』

 いつも自身がなくて、鬱々とした真紅の瞳が――自分の前だけでは和らぐ。
 そんな優越感に浸っていた己にとって、この状況は屈辱以外の何者でもなかった。

(性悪女の我儘に付き合うのは、もう終わりにしよう)

 ムガルバイトは勝手に婚約者を名乗り、自分との結婚を目論む女と縁を切るために行動を開始する。
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