虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「何、も……。知らない、くせ、に……」

「ああ。そうだな」

「私、の……。苦しみ、も……。悲しみ、も……。全部、忘れたかった……。終わらせなければ、いけなかったのに……」

 途切れ途切れに恨み言を口にするエクリーユは、身体が言うことを聞かない現状に歯がゆさを感じる。
 そんなこちらの反応は想定済みなのか、彼は安心させるように腰まで長く伸ばした黒髪を優しく撫でつけた。

「あんな奴らに、心を砕く必要はない」

「だったら、どうして……」

「今は、休め。話なら、いつでもできる」

「う……」

 少女を抱きかかえる男性に、敵意は感じられない。
 気分が悪い中、無理をしてたくさん唇を動かしたからか。
 エクリーユは胃液がせり上がってくる不快感をいだき、それをぐっと堪える。

(彼のアドバイスは、一理あるわ……)

 渋々彼の言葉を受け入れると決めたレべラゼム王国の姫は、急な転移による平衡感覚の乱れが正常に戻るまで――強制的に顔見知りの青年に身体を預ける羽目となった。
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