虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(私の復讐は自害することで、完遂するはずなのに……。彼はどこへ、転移したのかしら……)

 意識が朦朧とする中、真紅の瞳を細めてぼーっと得体のしれない人間の腕の中に抱きかかえられて、どれくらいの時間が経過しただろう。

(ようやく、視界が元に戻ったわ……)

 長い黒髪を撫でつける指が、誤って首筋に触れる。

 ゾクゾクと何かがせり上がってくるような不思議な感覚をくすぐったさを感じて身を捩ったエクリーユは、ようやく自分が見慣れぬ部屋の一室に転移し――レべラゼム王国の国王である、22歳のリドディエ・ルーレンベルムの腕の中に捕らえられていると知った。

「リド、ディエ……。陛、下……?」

「僕の名を、知っていたのか」

「あ、当たり前です……。兄様の、ご友人ですもの……!」

 ムガルバイトを心底敬愛していたエクリーユにとって、兄の友人もまた心を許すに相応しい存在だ。

(それに、兄様から……。何度かお話を、聞いたことがあるもの……)

 無能と蔑まれ、社交場にすら出入りを許されなかった妹を不憫に思ったのだろう。

 兄はさまざまなことをエクリーユに教えたあと、親友の話をしてくれた。
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