虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(エクリーユの望みながら、どんな願いでも叶えてあげたのに……)

 ムガルバイトがどれほど妹を慈しみ、想いを募らせているか。
 日々の生活を盗み見られていることすら知りもしないエクリーユが、わかるはずがなかった。

(ねぇ。君はどうして、そいつじゃなければいけないんだ?)

 目を閉じればいつだって最愛の彼女の姿を観察できるのに、一方通行なのが歯がゆくて仕方がない。

『エクリーユ』

『リドディエ様!』

 真紅の瞳を優しく和らげて微笑み、嬉しそうに彼女から飛びつかれる男は、自分だけのはずだった。
 なのに――今ではその座は、親友に奪われてしまった。

(あんな奴に、エクリーユの可愛さを流布なんてしなければよかった……!)

 どれほど後悔したところで、過去は変えられない。
 ムガルバイトが最愛の妹と笑い合う日を現実のものとするためには、再び彼女を奪い返すしかなかった。

(どんな手を使ってでも、必ず手に入れてみせる)

 青年は漆黒の瞳に確かな決意を宿した。
 そんな国王の元へ、おどおどと挙動不審な歩き方の男性が姿を見せる。
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