虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「に、兄さん……っ」
イトゥクはいつも一緒にいるリシーロの姿が見当たらないのを、不思議がっているらしい。
キョロキョロと視線をさまよわせ、首を傾げていた。
(俺が自由に使える駒は、それほど多くはない……)
家族の中でエクリーユの次に権力を持たぬ男は従順で、意思を持たぬ人形のように見えるが――その内面はやはり父親によく似て強情でずる賢い。
(こいつの本性を暴く時間すら惜しい。早く、準備を進めないと……)
彼は運がいい。
恐らく、自分よりも長生きするだろう。
そんな予感をいだきながら、ムガルバイトは漆黒の瞳に仄暗い感情を宿して告げた。
「隣国との和平条約を、正式に破棄する」
「ええっ!? 兄、さん……! そ、それは……!」
「再び手を取り合いたいなら、エクリーユを返せと伝えて。出来ないと言われたら――戦争だ」
己の身勝手な欲望を叶えるために、どれほどの血が流れようとも関係がない。
イトゥクはいつも一緒にいるリシーロの姿が見当たらないのを、不思議がっているらしい。
キョロキョロと視線をさまよわせ、首を傾げていた。
(俺が自由に使える駒は、それほど多くはない……)
家族の中でエクリーユの次に権力を持たぬ男は従順で、意思を持たぬ人形のように見えるが――その内面はやはり父親によく似て強情でずる賢い。
(こいつの本性を暴く時間すら惜しい。早く、準備を進めないと……)
彼は運がいい。
恐らく、自分よりも長生きするだろう。
そんな予感をいだきながら、ムガルバイトは漆黒の瞳に仄暗い感情を宿して告げた。
「隣国との和平条約を、正式に破棄する」
「ええっ!? 兄、さん……! そ、それは……!」
「再び手を取り合いたいなら、エクリーユを返せと伝えて。出来ないと言われたら――戦争だ」
己の身勝手な欲望を叶えるために、どれほどの血が流れようとも関係がない。