虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(リドディエ様に、嘘をついてしまったわ……)

 リシーロが地下牢に捕らわれてから1週間後。
 エクリーユは、自己嫌悪に陥っていた。

(あれはあくまで、私の願望……。あの子を気にせずに過ごすなんて、無理よ……)

 四六時中リドディエと一緒に過ごせれば、楽しさや幸福感が勝るのだろう。
 しかし、彼は何かと仕事が忙しい。
 1人でじっとしている時間が多いからこそ、瞼を閉じれば嫌でも大嫌いな妹の姿を思い出してしまうのだ。

(黒百合の花に埋もれたら、少しは冷静になれるかしら……?)

 エクリーユは気分転換も兼ねて、寝室の外に出た。
 廊下を経由して寝室の窓から見える花壇の前にやってきた少女は、美しく咲き乱れる花々へ、勢いよく身体を埋めた。

 ――香しい匂いが、鼻を劈く。

(不愉快なはずなのに、心地よさを感じるなんて……。どうかしているわね……)

 エクリーユは何度か浅い呼吸を繰り返し、母国を思う。

(あんな国、滅びてしまえばいいと思っていた……)

 リドディエに連れ去られてから、彼の国の評判は悪化する一方だ。
 王族の仲で唯一まともに国民たちと対話ができていたはずの男は、最愛の妹を失い――壊れてしまった。
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