虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(もしもあの時、彼を信じ続けていたら……。私はここで、兄様に助けを求めていたのかしら……?)

 陛下と想いを通じ合わせた今となっては、どうでもいい話だ。
 どんなに彼との未来に未練をいだいたところで、なんの意味もない。

 だが、もしも――。
 まだ彼が、己に愛を注いでくれると言うのなら――。

「ねぇ、兄様。もしも私が、まだあなたに未練があると言ったら……。喜んでくださる……? それとも……」

 リシーロの主張を真に受けるのであれば、遠く離れた地で異能を使い、黒百合の花に埋もれるエクリーユの姿をどこかで見ているのだろう。
 ムガルバイトは転移魔法を使えない。
 だが、この会話を聞いていれば――きっと次に顔を会わせた時、彼の本心が聞けるだろう。

(そこで私が好きだと言ってくださったところで、何かが変わるわけではないけれど……)

 これは自分たち兄妹の決別に必要な、儀式のようなものだ。
 まだ未練が残っているような態度を取っておき、己を絶望の淵へ叩き落とした兄を同じ目に遭わせるための――。

「エクリーユ!」

 だから、血相を変えた陛下が己の元へ駆けつけてきた時は驚いてしまった。
 まさかリドディエが、こんなにも自分を心配してくれるなど思いもしていなかったからだ。
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