虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 彼と一緒にいれば、安全を脅かされなくて済む。
 そう学習した少女は、まるで生まれたばかりの雛鳥が親に引っついて回るように、兄のことを第一に考えていた。

 しかし、今は違う。

(たとえどんなに兄様が、私を欲していたとしても……。その手を取ることはないでしょう)

 ――王女の一番は、リドディエだ。
 何があっても目の前にいる最愛の人だけを愛し続けると誓った少女は今は、真紅の瞳を優しく和らげた。

「そう、か」

 だが、陛下の反応はどうにも芳しくない。
 少女はなぜなのかと不思議に思いながら、問いかける。

「陛下? どうしたの……?」

「君に、言わなければならないことがあるんだ」

 リドディエは苦悶の表情を浮かべると、紫色の瞳を苦しげに細めた。

(リドディエ様、すごくつらそうだわ……)

 エクリーユは彼の憂いが少しでも早く薄れるようにと願いながら、続きを促す。
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