虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「それはどうして?」

「どれほど苦痛をいだいたとしても、俺のことを思い浮かべれば心が軽くなる。エクリーユの味方はたった1人だけだと、印象づけたかったからさ」

 長年隠されていた気持ちを本人の口から聞かされたエクリーユは、真紅の瞳に憎悪を滲ませて吐き捨てた。

「あなたって、本当に最低な人間ね」

「あははっ。褒め言葉として受け取っておくよ。憎しみの籠もった蔑む視線も、最高だ……!」

 兄の豹変を間近で目にしたイトゥクは、顔を真っ青にして怯えている。
 彼が危険人物だと言うのは、この場にいる全員の共通認識なのは明らかだ。

(ムガルバイト兄様が、こんな人だと思わなかったわ)

 少女はムガルバイトとの決別を決心すると、怒気を孕んだ声とともに言葉を発した。

「あなたはリドディエ様が自分と同じだと言うけれど、決定的な違いがあるわ」

「へぇ? 例えば、どんな?」

「陛下は、私が苦しんでいるところを見た時、一緒に悲しんでくれた。仄暗い喜びを胸にいだくあなたとは、違う……!」

 自分を愛してくれる2人の男。
 そんな彼らの違いを口にした妹の姿を目にした兄は、どこか悲しそうに目を伏せる。
 その後、肩の力を抜いてぽつりと呟いた。
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