虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 なぜならば――どれほどリドディエの身体に剣をぶつけても、彼が傷つく様子は見られないからだ。

「な……っ。これは……っ」

「君の異能が、どれほど遠く離れた地にいたとしても最愛の人の姿を監視できると言う、戦闘には適さないものである時点で、剣を振るうまでもなく勝負は決している」

「まさか、これが君の異能だとでも言うのか……!?」

「どうだかな」

 リドディエは答えを曖昧にはぐらかすと、ムガルバイトの首元へ剣の切っ先を突きつけた。

「命までは奪うつもりはない。今すぐに騎士たちへ、全面降伏を宣言しろ」

「嫌だと言ったら?」

「エクリーユの前で、もっと無様な姿を晒す羽目になるぞ」

「舐められたものだね……。その程度の脅しで、俺が全面降伏を宣言すると思っているなんて……」

 漆黒の瞳の奥底に、怪しい光が輝いた。
 エクリーユはその光景を目にして、はっと言葉を詰まらせる。

「君に負けを認めるくらいなら、俺はエクリーユの心に残る道を選ぶよ」

 その瞳に宿る感情が何かを、悟ったからだ。

(止めなければ……!)

 2人は本当の兄妹ではなかったが、長年家族として過ごしてきたのだ。
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