虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 そんな状況では、他者をまとめ上げて指示を出すなど到底無理な話だった。

「この不毛な争いを止めるぞ」

「は、はい!」

 イトゥクはリドディエの提案に賛同し、彼の隣に並び立つ。
 そして――婚約者は崖下で戦う兵士たちに向けて、声を荒らげた。

「皆のもの! よく聞け! アティール王国の王、ムガルバイトはリドディエ・ルーレンベル厶が捕らえた!」

「アティール王国第5王子、イトゥク・アベティーラは王に代わり、全面降伏を宣言します……!」

 啀み合っていた騎士たちはその叫び声を耳にして、剣を屠るのを止める。
 その後、聞こえてくるのはアティール王国の騎士たちの口から語られた歓喜の声だった。

「え、エクリーユ……っ」

 戦争の集結を見届けたイトゥクは、今にも倒れ伏してしまいそうなほどに緊張したまま、妹に声をかける。

「ご、ごめんなさい……! 僕が、もっと早くに勇気を出して、君を助けていれば……!」

「あなたからの謝罪は、受け取らないわ」

「ど、どうして……」

「もう二度とかかわらないでと、言ったはずよ」

「そ、それは……」

 兄は何かを言いたそうにエクリーユを見ていたが、少女は続きなんて聞きたくなかった。
 そんな婚約者の姿を目にした王は、騎士に命じた。
< 239 / 246 >

この作品をシェア

pagetop