虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「家族を傷つけた私に、そんな資格は……」

 その反応を見た彼は、紫の瞳に確かな決意を宿し、低い声で発する。

「僕は、納得できない」

「リドディエ様の同意なんて、必要ないわ。私は、もう決めたの。だから……」

 エクリーユはこれ以上の対話は無駄だと言わんばかりに、舌を噛み切って自害を試みた。
 その油断も隙もない行動に目を丸くした国王は、すぐさま少女の口に己の指先を差し込みそれを阻止する。

「ふ、ぐ……っ」

「止めろ」

 口内には、血の味が広がっていく。
 エクリーユは不快感に耐えきれず、真紅の瞳を細めて呻き声を上げた。

「う……っ」

「自分で自分を、傷つけようとしないでくれ」

 どこか泣き出しそうな声を耳にした少女は、大きく瞳を見開いて驚く。
 彼が己の小さな唇から指先を引き抜いた瞬間――そこに鮮血が付着していると気づいたからだ。

「そ、そんな……っ!」

 自分が歯を立てたせいで、陛下の指先を傷つけてしまった。
 これから自分はどんな罰を受ける羽目になるのかと全身を小刻みに震わせたエクリーユは、真紅の瞳から静かに涙を流す。
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