虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「僕の手を取れ、エクリーユ。2人ならきっと、辿り着けるはずだ」

 己の細い指先とはまったく異なる大きな手を差し出された少女は、真紅の瞳を大きく見開いて驚く。

『俺の名前は、ムガルバイト。君の兄だよ』

 その光景は、幼い頃の兄とそっくりだったからだ。

(お兄様は私に手を差し伸べてはくださったけれど、幸せな時間は長く続かなかった……)

 エクリーユは恐れている。
 あの日のように妹と天秤にかけられ、自分が捨てられてしまうのではないかと。

 しかし――。

「欲しいものはなんでも買い与えてやる。幸福になる資格がないと嘆くなら、僕が大切に慈しむ。これからは血の繋がった家族ではなく、僕のことだけを考えて生きてくれないか」

 リドディエは少女の不安を取り除くように、己に有利な提案してくれた。

「君を、世界で一番幸せな王妃にしてやる」

 彼の告白を聞いたエクリーユは、信じられない気持ちでいっぱいになる。

「そ、そんな……。それでは、まるで……」

「ああ。そうだ。僕はずっと、エクリーユが欲しかった。それでは、理由にならないか」

 ――幼い頃から虐げられていた自分が、隣国の国王に愛を囁かれるなどあり得ない。
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