虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(自惚れては、いけないわ……)

 エクリーユは何度も自分に言い聞かせ、リドディエの提案を遠回しに拒絶する。

「この手は、穢れているわ……」

「構わない」

「私は許されない罪を犯したのよ……」

「それでもいいと言っている」

「あなたの命を、奪うかもしれないのに……」

「その時は、君の好きにしてくれ」

 それでも、彼はけして諦めなかった。
 考える暇もなくぽんぽんと飛び出てくる回答に目を丸くしたエクリーユは、ついに抵抗を止める。

「一度契約を交わしたら、戻れないわよ。私を裏切れば、あなたは命を落とす」

「構わん」

 彼はまるでエクリーユの口にする言葉が最初からわかっていたかのように、迷いなく言葉を吐き出した。
 それが、不思議で堪らない。

(命を失っても構わないと誓うほど、私に好意をいだいてくださっている。それは一体、なぜ……?)

 少女の疑問に、答えは返って来なかった。
 陛下の真意を探るように、隣国の姫は紫色の瞳を見上げる。

(ミステリアスな瞳……)

 彼の目は、物憂げに細められていた。
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