虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(今は、悲しんでいるのかしら……? 私が、自ら命を絶とうとしたせいね……)

 さすがは一国の王だ。
 どれほどじっと見つめたところで、不満くらいしか読み取れない。

(彼の手を取って生きると、そうはっきりと宣言すれば、リドディエ様は……笑ってくださるかしら……?)

 まだ、出会ったばかりなのに――。

 彼の笑顔が見てみたいと思うほどに心を許しているなんて、おかしなことだ。
 あり得ないとどれほど必死にしても、エクリーユは彼を熱望するのを止められなかった。

(これは彼が、異能を持っているせい……?)

 王家の血を引き継ぐ者は、異能を持って生まれる。

 それは、エクリーユが生まれ育った国だけの話ではなかった。
 少女が炎を使役するように、リドディエにもなんらかの力を持っている。

(彼の異能が、魅了だったらよかったのに……)

 何もかもを忘れて、彼のことだけで頭をいっぱいにしたかった。

 そうすれば、少女は王が望む通りの姿を見せられただろう。
 よく笑い、生きることを楽しみ、リドディエのそばにいるのが幸せだと語り、愛を囁く。
 そんな自分を夢想したエクリーユは、真紅の瞳を悲しげに伏せた。
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