虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「俺は、ムガルバイト。5番目に生まれた、第4王子だよ」
「今まで、どうして……」
「うーん……。いろいろ、事情があってね。これからは、集まりにもちゃんと出るよ」

 ムガルバイトはこれまで、王家の子どもたちが一同に介する場に出席した経験がないと聞き、エクリーユは納得する。

(お兄様は私が不義の子と言われてはみ出し物になっていると、ご存知ないのかもしれないわ……)

 今は人当たりのよさそうな人物に見える。
 しかし、兄姉たちから話を聞けばきっと豹変するはずだ。

「これから、よろしくね」

 ムガルバイトはこちらに、満面の笑みを浮かべて手を差し伸べてくる。
 少女はその指先を、ぼんやりと生気の籠もらない瞳で見つめた。

(この手を取って、本当にいいの?)

 1人ぼっちの幼子が逡巡したのは、一瞬だ。
 頼れる乳母を失った少女にはどうしても、今すぐに自分を支えて包みこんでくれるような、年上の存在が必要だったから――。

(悩んでいる暇なんて、ないでしょう? 差し伸べられた手を拒否したら、一生後悔するわ……!)

 こうしてエクリーユはおずおずと小さな指先を動かし、彼の大きな手を取った。

 この選択が、いずれ過ちであったと後悔することになるなど、気づけぬまま――。
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