虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「兄様」

 それから2人は、時間の許す限り一緒にいた。
 少しでもムガルバイトのそばを離れると、他の兄たちから虐げられてしまうからだ。

(兄様が手を差し伸べてくださってから、私の生活は驚くほど変化した……)

 彼のそばにさえいれば、不思議と自分を目の敵にしていた家族からの攻撃がピタリと止んだ。

 心ない言葉をすれ違いざまに投げつけられることはあっても、身体の至る所に傷を作らなくてよくなった。
 これに喜んだエクリーユは、精神的な余裕が出てきたからか。
 口元に笑みを浮かべるようになった。

「なんだか私、変だわ。兄様と一緒にいると胸がぽかぽかと暖かな気持ちに包まれて、ムズムズするの……」

 彼と行動をともにしているうちに、ムガルバイトが1番信頼できる家族になったせいだろう。

 少女は頬を赤らめ、ドキドキと高鳴る胸元を小さな手で押さえつけた。
 そんな愛らしい妹の姿を嬉しそうに見つめた兄は、優しく口元を綻ばせてエクリーユに教え込む。

「それは俺が、好きって証拠だよ」

「私が、兄様を……?」

「うん。俺もエクリーユが好きだから……お揃いだね」

 無能と呼ばれるようになってから、少女の世界には白と黒以外の色が失われてしまった。
< 46 / 246 >

この作品をシェア

pagetop